もし金属が錆びない世界だったら…? — 錆と化学反応から見える意外な世界
- sakurai-column
- 5月9日
- 読了時間: 4分

1. 錆がもたらす影響
金属が錆びることで発生する経済的損失は、世界全体で年間数千億円から数兆円に及ぶとも言われています。
特に、建物・橋梁・道路といったインフラや、車両・船舶などへの影響は大きく、メンテナンスや修理・交換のコストがかさむだけでなく、安全性にも大きく関わってきます。
金属の中でも鉄や銅などは特に錆びやすく、湿度や塩分が多い環境では錆の進行が早まります。たとえば海辺にある橋や船舶は、錆による劣化が非常に速いのです。
また、ステンレスやアルミニウムのような耐食性の高い金属も、条件次第では錆びてしまいます。
2. 錆がないことで得られるメリット
もし、金属が錆びることがなかったとしたら「私たちの暮らしや経済」は、どれほど変わるでしょうか?
建物やインフラの維持費が大幅に削減され、公共予算や企業の運用コストが抑えられます。
錆による劣化が原因の事故が減り、安全性が向上します。
錆が原因で廃棄される金属製品が減り、環境への負荷も軽減されます。
製品や機械の寿命が延び、より持続可能な社会に近づきます。
つまり、錆がなければコスト削減だけでなく、環境保護や安全性向上にもつながる可能性があるのです。このように良い部分だけを見てみると、悪事しか働かない厄介者『錆』がこの世から無くなってしまえば、錆対策に頭を悩ませなくても済むのかもしれませんね。
3. 錆はただの汚れじゃない? — 化学反応の視点
そもそも錆は、なぜ発生するのでしょうか?
錆は金属が酸素や水分と反応して生じる酸化反応の一種です。
たとえば鉄が酸化すると、「酸化鉄(Fe₂O₃)」という汚れに似た赤褐色の錆ができます。この反応は「酸化還元反応」と呼ばれる、化学の基本的なプロセスのひとつです。
酸化:物質が酸素と結びつく、または電子を失うこと
還元:物質が酸素を失う、または電子を得ること
酸化還元反応がなければ腐食現象(錆の発生)も起こりませんが、実はこの反応、私たちの生活にとって非常に重要なのです。
4. 金属が錆びない世界を想像してみると…
もしもこの世界から酸化還元反応が消えてしまったら、どうなるでしょう?
化学反応の多くが成り立たなくなり、薬品や材料の製造ができなくなります
エネルギーを得るための「燃焼反応」も起こらなくなり、暖房・発電・自動車などが使えなくなります
細胞間での酸素の受け渡しができないため、呼吸や消化など私たちの体の中で起きている生命活動も停止します
地球規模で見れば、酸素や二酸化炭素の循環もストップし、自然界のバランスが崩壊します
つまり、「金属が錆びない=酸化還元反応がない」世界では、そもそも生物が存在できないのです。錆があるということは、裏を返せば生命活動やエネルギー循環が正常に行われている証拠とも言えるかもしれません。
5. おわりに
「体が錆びる」という表現があります。これは活性酸素が体内の細胞を酸化させることで、老化や病気の原因になるという話ですが、これも酸化還元反応の一例です。
私たちは、金属の錆を「悪者」として排除しがちですが、酸化反応は自然界の大切な仕組みのひとつ。完全になくすことはできませんし、すべきでもありません。だからこそ、錆とは「うまく付き合う」ことが重要なのです。
今回は、「もし金属が錆びなかったら?」という視点から、錆についてお話しさせていただきました。
共存しなければならない「錆」とは、これからも向き合わなければなりません。
当社では、従来の防錆対策である防錆油や気化性防錆紙(またはフィルム)とは異なる、最新テクノロジーを用いた特殊防錆フィルム「インターセプトテクノロジー」を販売しております。防錆油を一切使わない画期的な防錆フィルムです。製品内容を紹介したページがありますので、ご興味がございましたらぜひご覧ください。
執筆者紹介
第三営業部 開拓・開発グループ
防錆フィルム「インターセプトテクノロジー」販売の中核部門として活動。防錆管理士が在籍。2023年7月にインターセプトテクノロジージャパン㈱より事業譲渡を受け、日本総代理店として米国EMI社とパートナー契約を締結。現在、国内はもとよりアジア各国へ販売展開中。