防災用ヘルメットは自転車用にも使える?-知っておきたい安全の話-
- 2月25日
- 読了時間: 6分

災害時や自転車での移動において、頭部を守るヘルメットは命を左右する重要な保護具です。弊社では防災用ヘルメット(現場用保護帽)として、折り畳み収納式の「オサメット」と回転収納式の「クルボ」を取り扱っており、しばしば「防災用ヘルメット(現場用保護帽)は自転車用として使用できますか?」というお問い合わせをいただきます。
そして、そのお問い合わせについては、「防災用ヘルメット(現場用保護帽)は自転車用として使用できません」とお答えをしています。
「防災用ヘルメット(現場用保護帽)」と「自転車用ヘルメット」はどちらも「ヘルメット」というくくりの製品ではありますが、実は目的・構造・安全基準が大きく異なり、互換性はありません。
本コラムではその理由について、それぞれの特徴と違い、そしてなぜ使い分けが必要なのかを分かりやすく解説します。
目次
☆まとめ ←お時間のない方はここからご覧ください
防災用ヘルメット(現場用保護帽)の特徴
防災用ヘルメット(現場用保護帽)は、地震や火災、建物倒壊などの災害現場での二次被害から頭部を守ることを目的に設計されています。上からの衝撃や飛来物に耐えることを最優先に設計されている点が特徴です。
主に想定されている危険
・地震や台風による落下物・飛来物
・転倒時の頭部打撲※墜落時保護規格。「オサメット」は非対応。
・狭所移動時の接触
構造と特徴
・帽体(外側の硬い部分)には、主にABS樹脂・FRP(ガラス繊維強化プラスチック)・PC(ポリカーボネート)・PE(ポリエチレン)が採用されている
・内装は比較的簡素で、衝撃吸収は限定的
・上からの衝撃に強い
・折りたたみ式など、省スペースで収納でき、携帯性に優れるモデルも多い
・白、黄、オレンジなど、明るくて目立ちやすい色が多い
主な安全規格
防災用ヘルメット(現場用保護帽)は、労働安全や災害現場での使用を前提とした規格に基づいています。
・保護帽の規格(国家検定合格品)
厚生労働省が定めた労働安全衛生法に基づく規格で、「飛来・落下物用」「墜落時保護用」「電気用(使用電圧7,000V以下)」など用途別に区分されています。
この規格に合格した製品には、ヘルメット内部に「労・検ラベル(型式検定合格品シール)」が貼付されます。衝撃吸収性、耐貫通性などの性能試験に合格した製品のみが表示可能です。
また、電気作業用保護帽については、厚生労働省告示「絶縁用保護具等の規格」に合格する必要があります。
※弊社で取り扱っているヘルメットの「オサメット」は「飛来・落下物用」、「クルボ」は「飛来・落下物用」&「墜落時保護用」となります。
主な試験内容
・上方からの落下物による衝撃吸収性試験
・鋭利物の耐貫通性試験
・耐電圧試験(電気用のみ)
自転車用ヘルメットの特徴
自転車用ヘルメットは、走行中の転倒や衝突時に発生する高速・高エネルギーの衝撃から頭部を守るための装備です。走行中の転倒や衝突時に、頭部へ伝わる衝撃をどれだけ低減できるかを重視しています。
主に想定されている危険
・走行中の転倒
・車両や障害物との衝突
・路面への頭部強打
構造と特徴
・帽体には、主に軽量な樹脂素材のPC(ポリカーボネート)やABS樹脂が採用されている
・発泡ポリスチレン(EPS)や発泡ポリプロピレン(EPP)製の衝撃吸収ライナーを内蔵
・外殻は薄く、衝撃を分散させる設計で、前後左右からの衝撃に強い
・通気口が多数配置され、通気性が高い
・軽量で長時間着用しても首への負担が少ない
・黒、グレー、ネイビーなど、普段着やスーツに合わせやすい暗い色も多い
主な安全規格
自転車用ヘルメットは、走行中の事故を想定した独自の安全基準が設けられています。
・SGマーク(日本)
一般財団法人製品安全協会が定める規格で、一定の衝撃吸収性能と耐久性を保証します。
・JCF公認/推奨(日本自転車競技連盟)
競技用としての安全性・性能を満たした製品に付与されます。「公認」と「推奨」の安全性能は同じですが、競技によっては「公認」でなければ使用できない場合があります。
・CE規格(EN1078・欧州連合)、CPSC(アメリカ合衆国)
海外で広く採用されている国際的な安全基準です。CEマークには、自転車用「EN1078」の他に、軽作業用「EN812」などがあり、必ず「EN1078」の表示があるか確認が必要です。
主な試験内容
・人頭模型にヘルメットを装着しての落下衝突試験
・あごひもの引張強度試験
・着用時の脱落防止性能試験
まとめ
比較表
項目 | 防災用ヘルメット(現場用保護帽) | 自転車用ヘルメット |
主目的 | 落下物・飛来物対策 | 転倒・衝突時の衝撃吸収 |
想定危険 | 頭頂部方向からの衝撃 | 前頭・側頭・後頭部方向からの衝撃 |
内部構造 | 簡易的 | 高性能な衝撃吸収材 |
重量 | やや重め | 軽量 |
通気性 | 低い | 高い |
規格・マーク | 「労・検」(日本) | 「SG」(日本) 「JCF」(日本) 「CE(EN1078)」(欧州連合) 「CPSC」(アメリカ合衆国) |
なぜ互換性がないのか
防災用ヘルメット(現場用保護帽)と自転車用ヘルメットは、想定する危険が異なり、規格が違うため、相互に代用することはできません。
・防災用ヘルメット(現場用保護帽)は自転車事故特有の高速衝撃を想定していない。
・自転車用ヘルメットは重量物の落下や貫通を想定していない。
・規格外の使い方では、どちらも本来の安全性能を発揮できない。
安全規格は「最低限守られる性能」を保証するものです。用途外での使用は、その保証の対象外となります。
防災用ヘルメット(現場用保護帽)を自転車で使うと起こる危険
防災用ヘルメット(現場用保護帽)を自転車走行時に着用すると、大きなリスクを伴います。最大の問題は、転倒時の衝撃を十分に吸収できない可能性が高いことです。防災用ヘルメットは硬い外殻で落下物を受け止める設計のため、走行中に横方向や斜め方向へ転倒した場合、衝撃が頭部へ直接伝わりやすくなります。
また、重量があることで首への負担が増し、衝突時にむち打ちのような二次被害を招く恐れもあります。さらに、通気性やフィット調整機能が自転車用と比べて簡易的な製品もあり、走行中にズレたり視界を妨げたりする危険も否定できません。「ヘルメットを着けているから大丈夫」という誤解が、かえって重大事故につながる可能性があります。
最後に
防災用ヘルメット(現場用保護帽)と自転車用ヘルメットは、外見が似ていても機能や安全性能は異なります。
災害対策には防災用ヘルメット(現場用保護帽)を、自転車走行には自転車用ヘルメットを着用しましょう。
なお、補足となりますが、各ヘルメットに共通する代表的な注意点として、「一度でも大きな衝撃を受けたら、新しいものと交換する」という点が挙げられます。外観に異常がなくても内部が損傷していたり、目に見えないダメージを受けていたりする可能性が高く、次に衝撃を受けた時に頭部を十分に保護することができません。
それぞれの役割と使用上の注意を理解し、適切に使い分けることが、自分や家族の命を守る第一歩となります。用途に応じた正しい選択を心がけましょう。
執筆者紹介
葉山 和裕(Kazuhiro Hayama)
2005年入社。2021年に開設した自社ECサイト「SAKURAI Directshop」の立ち上げから運営に携わり、自社サイト全般にも関わっている。